2016 年(平成 28 年)7 月 14 日に発生した熊本地震の被害から完全復活を果たし、最新テクノロジーで革新的な進化を遂げた熊本城の大天守を紹介します。
熊本城
熊本城は、熊本県熊本市中央区にある城郭です。国の特別史跡に指定されており、日本三名城の一つに数えられています。
熊本城は、戦国武将の加藤清正によって築城されました。清正は築城の名人として知られており、熊本城は当時の最先端の技術と工夫が盛り込まれた城郭です。
熊本城の特徴はその堅牢な構造にあります。石垣は高さ 20 メートル、厚さ 10 メートルにも達し、また、天守は 6 層からなる複雑な構造となっています。この堅牢な構造により、熊本城はこれまで一度も攻め落とされたことがありません。
しかし熊本城は、2016 年の熊本地震で大きな被害を受けました。現在も復旧作業が進められていますが、2023 年 7 月 22 日には大天守の一般公開が再開されました。熊本城全体としては 2023 年現在も復旧作業が続いていますが、修復が完了した大天守は、「建築」「歴史の継承」そして「観光」の両面で現代技術を纏った最先端城として復活を遂げました。
- 開園時間
- 9:00 ~ 17:00(最終入園, 天守への入場は 16:30 まで)
- 休園日
- 12 月 29 日 ~ 12 月 31 日
- 料金
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- 高校生以上:800 円
- 小・中学生:300 円
- 未就学児:無料
- 所在地
- 〒860-0002 熊本県熊本市中央区本丸 1-1
完全復活!現代技術で生まれ変わった天守閣
2016 年の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城天守ですが、「最新技術の耐震補強」そして「バリアフリー化」を果たし、2023 年に完全復活を遂げました。
さらには天守内の展示や内装もフルリニューアル。体験・体感型のアプローチを取った天守の展示は、現代技術によって「ただの展示」ではない、エンターテイメントとしての歴史の学びを提案します。
本記事では、そんな熊本城の天守内部を紹介していきます。
興味と楽しいを誘発!体感型コンテンツ
熊本城天守の展示はただの展示ではありません。映像や造形をふんだんに使用し、訪れた私達の興味関心を強く引くようなアプローチを取っています。
代表的なのは映像コンテンツ。解説もあり分かりやすい上、ついつい見入ってしまいます。
巨大な熊本城天守の模型。
これらは私達の背丈よりも大きな模型です。覗き込めば模型の精巧さに驚きますが、何より巨人にでもなった気持ちになれるのにも楽しさを感じます。
この模型に映像コンテンツが添えられており、天守の構造をより深く知る機会の提供も逃しません。
さらには、大きなパネルを使った展示で、歴史に詳しくない我々でも入りやすく、シンプルに「眺めるだけでも楽しい」要素が盛り込まれています。
そうかと思えば、ミニチュアサイズで超絶精巧な熊本城が現れます。
極めつけは、まるで原寸大かのような巨大な「御上段模型(おじょうだんもけい)」です。
「御上段」は、大天守最上階(6階)にあった部屋です。模型は時代の平面図や古文書をもとに復元されました。
近づいて見ると迫力がすごい。再現性が高いので、覗き込むと本当にそこにいるかのように感じます。
南には「松」、北には「秋野花」が描かれています。
他にも、シアタールームでの映像コンテンツ「天守シアター」や、プロジェクションマッピングを利用した解説など、直感的に分かりやすく興味を引くコンテンツが沢山用意されています。
これはまだ一部です。こういうコンテンツが大天守内に沢山あるので、根っからの歴史好き、城好きでなくても楽しめます。
天守のバリアフリー化と車いすについて
天守に入る前に、熊本城天守のバリアフリーについて触れておきたいと思います。
日本のお城とは元来、敵の侵入を少しでも防ぐ工夫がなされているものです。その一つとして、階段が急勾配に作られており、健常者であっても上りづらかったりします。
熊本城は全部で 6 階(実質 7 階)まであり、その全てを階段を上ることで進みます。
ただし、車いす利用者の方(介添者含む)をはじめ、視覚に支障のある方、階段利用が困難な方に限って、エレベーターを利用することが可能です。
エレベーターを利用したい場合は、熊本城のスタッフに声を掛けてください。案内してくれます。
ちなみに、天守はフルリニューアルされていますので階段も刷新されています。昔ながらの城によくある急勾配の階段はありませんのでご安心ください。
天守への入口も、このように完全にバリアフリー化がなされており、車いすでも天守へ入ることができます。
地下 1 階 天守入口 穴蔵
入口は大天守の脇にある小天守です。天守閣としては石垣の部分に当たるため、階層としては「地下 1 階」と数えられます。穴蔵(=地下階)と呼ばれるこの場所は、本来は土間に礎石(そせき: 建物の柱を受ける土台石のこと)が並び、その上に木の土台を置いて建物を支える柱を立てていました。
そのため、広く、吹き抜けのような構造になっているのが特徴です。
小天守の穴蔵は「御水屋(おんみずや)」と呼ばれる台所で、井戸や竈門(かまど)があり、当時は籠城にも耐えられる機能を備えていました。
階段を上がって 1 階へ向かいます。
1 階 加藤時代
「加藤時代」の「加藤」とは、熊本城を築城した加藤清正のことです。1 階では、熊本城の伝説や築城の歴史、加藤清正の人物像などの紹介がメインとなっています。
熊本城が堅牢だと言われた所以
熊本城が秀逸な理由の一つとして「堅牢な構造」が挙げられますが、その一翼を担っている石垣についても解説されています。
そして、熊本城全体に施された防御装置(壁・窓・忍び返し・狭間・石落とし)の解説
貴重な昔の写真や装飾
貴重な昔の熊本城の写真、古くは明治時代に西南戦争で消失する前の天守の写真も展示されています。
古写真にみる天守のすがた
こちらは昔、熊本城を飾っていた鯱瓦(しゃちがわら)
鯱(しゃち)とは、頭は龍、体は魚の想像上の生き物で、口から水を吐くため火除けとして城の屋根に置かれ、天守を守る棟飾りとして用いられました。
2 階 細川時代
2 階は熊本城の第二期の時代である、細川家の時代の展示です。
江戸時代、1632年(寛永 9 年)に清正の子である加藤忠広が身分を剥奪(改易)されたことで、次の熊本藩主として細川忠利が熊本城に入城したことから細川時代は始まります。
細川家の統治になってからは、熊本城下がさらに拡大しました。本丸全域を描く唯一の平面図などが大きなパネルで展示されています。
そしてここにも、カラフルなプロジェクションマッピングを使った展示・解説があります。
細川家の甲冑を目の当たりに!
天守とは、戦時において最後に籠城する場所であり、本来は武具類や食糧が備えられていました。熊本城の天守にも、加藤時代から備えられていた武具とともに、細川家の甲常類が大量に保管されていました。
1871 年(明治 4 年)の廃藩置県が行われた際に、天守にあった大量の武具類の保管が問題となりましたが、当時、細川家が歴代藩主の武具を 200 人以上の旧家臣に預けたことで、廃棄・売却を免れ、現在まで伝わったものも少なくないとされています。
このフロアに展示されている細川家の甲冑もその中の一つです。
3 階 近代
3 階は、西南戦争、明治維新、明治 22 年の熊本地震、そして天守の再建など、近代の歴史を展示しています。
開かれた熊本城
明治に入り、熊本城は「戦国の余物」「無用の贅物」とされ一度は解体の道を進みます。しかし政治的な事情もあり解体を免れた熊本城は、ここで「一般公開」に踏み切ります。それが「開かれた熊本城」です。
西南戦争
1877 年(明治 10 年)には、日本最後の内戦となった西南戦争が始まります。
熊本城は、西郷隆盛率いる薩摩軍と、谷干城率いる政府軍が戦う最初の舞台となりました。
熊本城は、50 日間にも及ぶ籠城戦を耐え抜き、最初で最後のこの戦いで「難攻不落」であることを証明しました。
明治 22 年熊本地震
西南戦争から 12 年後の 1889 年(明治22年)7 月 28 日深夜に、熊本の街を大地震が襲いました。マグニチュード 6.3 と推定される直下型地震で、熊本城でも各所の石垣が崩れる大きな彼害を受けました。
当時の崩れた石垣の写真を巨大パネルで見ることができます。迫力もさながらに、こういった記録がしっかり残されていることに頭が下がります。
天守の再建
1960 年(昭和 35 年)に、天守消失から実に 83 年を経て、天守の再建が実現しました。
4 階 現代
4 階は、現代の展示フロアです。まだ記憶に新しく、今もなお修復工事の続く 2016 年(平成 28 年)の熊本地震からの復興の様子が展示されています。
復興城主デジタル芳名板(ほうめいばん)は、「復興城主」として、熊本城の復旧・復元への寄附を行った方々の名前を見ることができる所です。
5 階 ちょっとした休憩スペース
5 階には歴史の展示はありません。その代わり、著名人のサインとベンチが設置されており、ちょっとした休憩スペースになっています。
ここから階段を上れば、いよいよ展望フロアです。
6 階 展望フロア
6 階は最上階、展望フロアです。熊本市街地を一望できます。
今、間違いなく日本で最も熱い城。
震災を乗り越え、最先端技術で蘇った熊本城天守が、城としての堅牢さ、アクセシビリティを追求したバリアフリー化に加えて、「体感型」という現代のエンターテイメント的アプローチを手に完全復活しました。
「面白そう」「分かりやすい」「楽しい」という要素は、歴史を知る最初のきっかけを作ります。こういったアプローチこそが、歴史に詳しくない、特に興味があるわけではない人にも「エンターテイメント」ととして歴史に気軽に、そして楽しく触れるきっかけを作れるといえるでしょう。
現代のテクノロジーと、継承され磨かれてきた伝統の技で復活を遂げた熊本城。
熊本城の大天守は、今、間違いなく日本で最も熱い城です。