日本には沢山の城が今も残っています。
それぞれの城には「築いた目的」があり、その目的に応じて「どこに築くか」を地形的な観点を持って決めています。
それにより日本のお城は「平山城」とか「山城」などといった分類を持ちます。
お城の分類はいくつあり、それぞれがどのような意味を持つのか?
これらの分類について解説します。
- 代表的な分類は全部で 9 つ
- 平城
- 山城(やまじろ)
- 平山城(ひらやまじろ)
- 丘城(おかじろ)
- 水城(みずしろ)
- 陸奥型城(むつがたじろ)
- 山岳城(さんがくじろ)
- 湖城(みずうみじろ)
- 島城(しまじろ)
- 湖城と水城の違いについて
- 日本の多彩な城の形態
代表的な分類は全部で 9 つ
日本のお城の分類について、代表的なもの(厳密にはもっとあります)は全部で 9 つです。
- 平城
- 平山城
- 山城
- 丘城
- 水城
- 陸奥型城
- 山岳城
- 湖城
- 島城
この中で特に、標高的な点で順列が付けられるものとしては「平城」「平山城」「山城」「丘城」の 4 つであり、
平城 < 平山城 < 丘城 < 山城
という順になります。
平城
平城(ひらしろ)は、平坦な地域に建設された城を指します。
平地に築かれるため、山城や丘城のような自然の高台を利用することが難しい地域において、防御力を高めるための工夫が施されています。
平城の特徴
- 地勢を活用
- 平城は平坦な地域に建てられるため、地勢を活用した防御施設が重要です。堀や土塁、石垣などを配置して、城の周囲を防御力を高めます。
- 周囲の防御
- 地形的な高台がない分、城の周囲に堀や土塁を掘ることで、攻撃者の侵入を難しくしました。防御施設は狭い地域でも広く配置されることが多いです。
- 城門の重要性
- 平地にあるため、城門が攻撃の要所となります。城門の構造や配置に工夫が凝らされ、要所には櫓や櫓門が設けられることもありました。
- 周辺の環境活用
- 平城の建設場所は都市や町などの中心地に多く、周辺の自然や人々の生活を活用した戦略が重要となりました。城の周囲には水路や道路、市場などが整備されることもありました。
代表的な平城(日本三大平城)
- 名古屋城(愛知県名古屋市)
- 広大な敷地に堀と石垣を組み合わせた防御施設を持つ平城の代表的な城です。
- 岡山城(岡山県岡山市)
- 城山と呼ばれる丘陵に建てられ、堀や石垣を活用して防御力を高めています。
- 広島城(広島県広島市)
- 平地に築かれた城で、城の周囲に広い堀と石垣が配置されています。
平城は戦国時代にはあまり築かれませんでした。比較的地形的には防御的に不利であったためです。ただしそれ故、河川など周辺の環境を取り入れた防御が特徴であり、併せて堀や土塁などの建築技術が特徴であったりと、歴史や文化を反映する重要な遺産となっています。
山城(やまじろ)
山城(やまじろ)は、山地や山岳地帯に築かれた城で、自然の地形を利用して防御力を高めた城を指します。
山城は、急峻な地勢や険しい斜面を活用して攻略が難しい構造を持ち、自然の障壁となる地形を利用して敵の侵入を阻むことを主な目的としていました。
山城の特徴
- 周囲が急傾斜や断崖絶壁といった自然の障壁で囲まれており、攻略が難しい要塞として機能。
- 地勢を利用して敵の進入経路を制限し、攻撃者が不利な状況になるように設計されていた。
- 主郭(本丸)や二の丸、三の丸などの区域が、地形に合わせて配置されている。
- 石垣や土塁、堀などの防御施設も使用されたが、山地特有の地形を利用したことが主要な特徴。
代表的な山城(日本三大山城)
- 岩村城(岐阜県恵那市)
- 鬼ヶ城山(おにがじょうやま)と呼ばれる山の上に築かれている。
- 高取城(奈良県高取町)
- 山名山(やまなやま)と呼ばれる山に建てられている。
- 備中松山城(岡山県高梁市)
- 倉敷川の左岸にある山に築かれている。
山城は戦国時代や江戸時代初期に多く築かれ、各地の地形や歴史的背景に応じてさまざまな形態が存在しました。山地特有の地形を利用しているため、防御性に優れており、攻略が難しく、堅固な城として知られています。
平山城(ひらやまじろ)
平山城(ひらやまじろ)は、平野の中にある山や丘陵などの地形を活用して築かれる城を指します。
山城や丘城とは異なり、平地や平野などそれほど高くない場所に建設されることから直接攻撃を受けやすいという平城と同じような弱点があるものの、そのリスクを軽減するために小高い丘などを利用して建てられており、周囲の地形を利用して防御力を高める工夫が行われています。
平山城の特徴
- 地勢の活用
- 平山城は、平野の中にある地形的な高台を利用して建設されます。この高台を利用することで、城からの視界が広くなり、敵の接近を早く察知することができます。
- 周囲の防御施設
- 平地に建てられるため、山や丘城のような自然的な防御要素は限られています。そのため、城の周囲に堀や土塁、石垣などの防御施設を設けて、城の安全性を確保します。
- 門や櫓の配置
- 平山城には門や櫓(やぐら)も設けられ、城の出入り口や監視の要所に配置されます。これにより、攻撃を受けた際の防御体制が強化されます。
- 戦略的配置
- 平地に建てられる城であるため、周囲の地勢や水利を活用した戦略が重要です。城の配置や周辺の地形を活かして、防御や補給の戦略が練られました。
代表的な平山城(日本三大平山城)
- 姫路城(兵庫県姫路市)
- 平城山(ひらじろやま)という小高い丘の上に築かれている。
- 城の周囲には堀と石垣が設けられ、山の斜面を活かして堅固な防御体制が築かれている。
- 津山城(岡山県津山市)
- 城山(しろやま)と呼ばれる丘に築かれている。
- 城山の急峻な斜面を利用した段々状の石垣が特徴であり、城山の自然の地形を活かして防御を固めている。
- 松山城(愛媛県松山市)
- 城山(しろやま)と呼ばれる山に建てられている。
- 城山の自然の地形を活かし急峻な山の斜面に石垣や堀を配置して防御を固めている。特に三の丸と呼ばれる部分は急傾斜地に築かれており、攻略を難しくした。
(津山城も松山城も「城山」となっていますが、城山は日本各地に存在しています。これは、城を築くために地形は重要であり、例えば山とは言えない、名前もついていない丘などの小高いところに城を建てた結果、そこを城山と言われるようになった背景があります。)
平山城は、戦国時代や江戸時代初期に多く築かれました。城下町が発展し、城を中心とした政治・経済活動が行われました。平地に立地することから、城の構造や要素がより見やすく、城内の建築物や遺構が多く残っている場合もあります。
平山城は、いってみれば平城以上、山城未満。双方の良いところを少しでも活かそうとした結果生まれたものになります。
また、平山城のうち丘陵上を城地としたものを丘城と分類することもあります。
併せて、戦国時代の丘城は舌状台地や小高い丘の上のみに縄張りが行われた城であり、その丘城の麓に曲輪を設けたものが近世の平山城であるという見方もあるようです。
丘城(おかじろ)
丘城(おかじろ)は、低い丘や小山に築かれた城を指します。
平山城以上、山城未満に分類される一方で、平山城にこの丘城が含まれることもあります。平山城が平城と山城の双方のエッセンスを取り入れた分類であれば、丘城はそこからより山城寄りになったもの。と解釈するのが納得感があるかもしれません。
丘城は山城と比べると地勢がやや緩やかでありながら、周囲を堀や土塁で囲んで防御力を高めた城です。
山城の特徴
- 低い丘や小山に築かれているため、山城よりは地勢が緩やかで、攻略が難しいが可能性が高い。
- 周囲を堀や土塁、石垣などの防御施設で囲んで、城の防御力を向上させている。
- 主郭(本丸)や二の丸、三の丸などの区域が設けられ、城内には住居や倉庫、武器庫などの建物が配置されることもある。
代表的な丘城
- 松坂城(三重県松阪市)
- 尼崎城(兵庫県尼崎市)
- 犬山城(愛知県犬山市)
丘城は、山城と平山城の中間的な特性を持ち、地形に合わせて防御力を高めたものです。平地に比べて自然の防御力が高いことから、戦国時代や江戸時代初期に多く築かれました。
水城(みずしろ)
水城(みずしろ)は、水を取り囲むようにして築かれた城で、主に水堀や湖、川などの水域を利用して防御力を高める城を指します。
水城は、水の障壁を活用して敵の侵入を難しくし、城内の安全を確保するために構築されました。
水城の特徴
- 水を取り囲むようにして城を築くことで、敵の侵入を難しくする防御策を取る。
- 水堀や水路、湖や川を利用して防御力を高め、水の障壁を主要な防御手段とする。
- 水の障壁により、敵が接近する際には舟や橋を通過しなければならず、攻略が難しくなる。
代表的な水城(日本三大水城)
- 高松城(香川県)
- 高松湾に面する島に建てられた水城で、水域を利用した自然の要素を防御に活かし、城内に堀や石垣が配置されている。
- 今治城(愛媛県)
- 瀬戸内海に面する島に位置し、城湖と呼ばれる水域が城を取り囲んでおり、海と結びついた防御の要素を持つ城。
- 中津城(大分県)
- 玄界灘に面した地に建てられた水城で、海を背景に水堀や石垣が配置されており、海との結びつきを強調した城。
水城は、水の障壁を活用した特異な城の形態であり、攻略が難しいことから防御力が高いとされています。また、水城が築かれた地域には水利や交通、防衛などの観点から独自の歴史や文化が育まれ、その遺構や環境も地域の特色を反映しています。
陸奥型城(むつがたじろ)
陸奥型城(むつがたじろ)は、主に東北地方の陸奥地域に見られる城の分類で、平地や低い丘に築かれ、土塁や竪堀(たてぼり)などを主要な防御手段としている城を指します。
陸奥地方は山岳地帯が多いため、山城や丘城と異なる特徴を持つ城が築かれました。
陸奥型城の特徴
- 主に平地や低い丘に築かれ、急峻な地形を利用しない特徴がある。
- 土塁や竪堀(垂直に掘られた堀)を活用して防御力を高める。竪堀は水をためることで敵を妨害する役割を果たす。
- 門や土塁、堀などを配置して城内と外部を区切り、敵の侵入を防ぐ。
代表的な陸奥型城
- 郡山城(福島県)
- 陸奥地方に属する郡山市内に位置する城。平地に築かれ、土塁や竪堀が特徴的である。
- 会津若松城(福島県)
- 会津地方にある城で、城下町とともに土塁や堀が防御施設として用いられている。
- 一関城(岩手県)
- 一関市内に位置する陸奥型城で、平地に築かれた城の一例。土塁と竪堀が見られる。
陸奥型城は、山城や丘城と比べて地形的な特徴が異なり、主に平地に築かれた城です。地形の利点を生かし、土塁や竪堀などを活用して攻略を難しくしました。陸奥地方の歴史や文化において重要な要素であり、地域ごとの特色を示しています。
山岳城(さんがくじろ)
山岳城(さんがくじろ)は、山地や山岳地帯に築かれた城で、険しい地形や急傾斜を活用して防御力を高めた城を指します。
山岳地帯に立地するため、自然の地形を利用して攻略を難しくし、敵の侵入を防ぐための城です。
山岳城の特徴
- 山地や山岳地帯に築かれるため、急傾斜や断崖絶壁を利用して防御力を高めた城。
- 地形を利用して防御施設を設け、攻撃者の進入経路を制限し、攻略を難しくすることを重視。
- 主郭(本丸)や二の丸、三の丸といった区域が、山地の地形に合わせて配置される。
代表的な山岳城
- 伊豆大島城(東京都)
- 伊豆諸島の大島に位置する城で、急傾斜な地形を利用して建設された山岳城の代表例。
- 高遠城(長野県)
- 信州型山城の代表例で、急峻な山の斜面に築かれており、自然の地形を最大限に活用した堅固な城。
- 七尾城(石川県)
- 能登半島に位置する城で、険しい山岳地帯に築かれた山岳城の一例。
山岳城は、その地域の地形に合わせて特有の特徴を持ち、攻略が難しくなることから防御力が高いとされています。自然の地形を最大限に生かして築かれたこれらの城は、日本の歴史や建築文化の一環として重要な存在です。また、山岳地域には地域ごとの特色や文化にも影響を与えており、その城の遺構や環境が地域の特徴を反映しています。
湖城(みずうみじろ)
湖城(みずうみじろ)は、湖や沼地を取り囲むようにして築かれた城で、水を利用した自然の防御施設を活用して防御力を高めた城を指します。
湖や沼地は、城の周囲を水域で囲むことで、攻略を難しくし、城内の安全を確保するための一手段として使用されました。
湖城の特徴
- 湖や沼地を利用して城を取り囲むことで、敵の侵入を難しくする自然の障壁を活用。
- 水域を利用して城内の防御力を向上させる。舟や橋などを通過しなければならないため、攻略が困難。
- 城の中には堀や石垣、門などの防御施設が存在し、城内外をしっかりと区切っている。
代表的な湖城(日本三大湖城)
- 松江城(島根県松江市)
- 宍道湖のほとりに築かれた
- 膳所城(滋賀県大津市)
- 琵琶湖の湖畔に築かれた
湖城は、自然の水域を利用して城の防御力を高める一例であり、攻略が難しいことから防御性に優れているとされています。地域の地形や水系に合わせて建設された湖城は、その地域の歴史や文化を反映する重要な遺産となっています。
島城(しまじろ)
島城(しまじろ)は、海や川に囲まれた島を利用して築かれた城です。水域を利用して城を囲むことで、攻略を難しくし、敵の侵入を防ぐための城を指します。
島城は、自然の防御施設となる水域を利用しながら、城内に堀や石垣、門などの防御施設を設けることで、より堅固な防御を実現しています。
一般的に水城に分類されることが多いですが、築城した土地が完全に島であることが特徴です。
島城の特徴
- 島を利用して城を築くことで、水を取り囲む自然の防御施設を活用。
- 島の周囲に堀や土塁、石垣などの防御施設を設けて城の防御力を向上させる。
- 島へのアクセスを制限し、攻撃者が舟や橋を通過しなければならないため、攻略が難しくなる。
代表的な島城
- 高島城(長野県諏訪市)
- 諏訪湖の中に築かれた
- 丸岡城(石川県丸岡町)
- 能登半島の沖に浮かぶ島に建てられている。周囲を海に囲まれた形状で、水域を取り囲む自然の防御を活かしている。
島城は、水を取り囲む自然の障壁を活用して城の防御力を高めることが特徴であり、攻略が難しいことから防御性に優れています。海や川に面する地域において、水域を利用した城の形態として重要な遺産となっています。
湖城と水城の違いについて
湖城と水城は、いずれも水を利用した城の形態ですが、特定の要素や築城の方法において違いがあります。
- 湖城
- 湖や沼地を取り囲むようにして城を築くことで、自然の水域を防御施設として活用する。
- 周囲を水域で囲むことで、攻略を難しくし、城内の安全を確保するための防御手段とする。
- 水域を利用した城の例として、鶴岡城や犬山城などが挙げられる。
- 水城
- 水堀や川、湖を利用して城を築くことで、水の防御を重要視する城の形態。
- 水域を取り囲むだけでなく、城内にも水堀や水路を設け、水を有効に活用して城の防御を強化する。
- 水を利用した城の例として、姫路城や彦根城などが挙げられる。
要するに、湖城は主に湖や沼地を取り囲むようにして築かれた城で、水域を城の自然な防御手段として活用することに焦点があります。一方で、水城は水を城の防御に積極的に利用しており、水堀や水路などを城内外に設けることで、水を取り囲むだけでなく城の内外に水の障壁を設けています。両者とも水を利用した城の形態ですが、その具体的な構造や築城のアプローチに違いがあります。
日本の多彩な城の形態
本記事では、多種多様な城の形態が、日本の地形や歴史的背景に基づいて築かれた様子を詳しく紹介しました。山城、平山城、丘城、水城、陸奥型城、山岳城、湖城、島城という個性的な城のタイプが、日本の地域ごとに異なる特色を持ち、その築城技術は日本の歴史と文化に大きな影響を与えました。
これらの城は、自然の地形や水域を巧みに利用しながら、攻略を難しくし、防御力を高めるための工夫が凝らされています。その結果、地域ごとに異なる城の形態が生まれ、それぞれが独自の歴史や文化を反映しています。これらの城は、日本の過去からの教訓や知恵を象徴し、今もなおその姿を通じて私たちに語りかけています。
また、城と自然の調和が見事に表現されたこれらの建築物は、美しい景観としてだけでなく、日本の文化遺産としても大切にされています。これからもこれらの城の姿を通じて、私たちは日本の歴史と文化に触れ、感銘を受けることでしょう。